教室レポート

庭の作品 その13

今回は写真左下のブロック上にある半円形の作品です。写真は10月半ばに撮影したもので、右側にはサルスベリが少しにぎやかな赤い花をつけています。この作品は古い作品で陶芸を始めて最初の作品展である二人展のために制作したものです。時は1988年、バブル景気真っただ中で翌年1月7日には昭和天皇がご崩御なさっておられます。同じ職場で陶芸指導員をしていた友人と一緒に地元のデパートで展示しました。この半円形は「無限の空間にいかに共鳴するか」といったことを考えていて出てきた形体です。写真の形は原形的なもので、この他に「空気の濃度」「空気の色彩」「空気の質量」「空気の膨らみ」「空気の断層」などといったタイトルの、ガラスや金属なども使ったミクストメディアの作品も制作しています。

この頃、①目に見えないものを視覚化したい ②若い頃特有の傾向かもしれませんが、陶芸の表現を拡げたいという思いがありました。目に見えない空気が持つ属性を取り出し日常において感じていない存在を顕在化しようとしています。その当時私の中ではまだ意識が希薄でしたが、地球上の生物にとって必要不可欠な存在であるのです。そして、その表現材料としてガラスや金属を組み合わせることでそれぞれの素材の持つ特性が浮き彫りになると考えて試みました。ガラスを使った作品はこの時以外にもあり、ご紹介できる機会があると思います。金属の方は単発的なオブジェとかで使っています。今回の作品は現在に連なっていませんが、その当時四大(しだい)として関心の対象だったものが、今は五輪という鮮明な形で私の心に響いています。