庭の作品 その2
庭のお話をしますと画家の熊谷守一という人のことが思い浮かびます。76歳の頃脳卒中の発作を起こし、長い時間立ったり歩いたりしていると耳鳴りやめまいなどの後遺症に悩まされるようになり、ほとんど外出しない生活になったそうです。13時半から16時半ごろまで(時によっては18時ごろまで)はお昼寝の時間で、よく庭にムシロを敷いて眠ったり寝転がりながら自然観察を楽しみ、来客があっても会わなかったといわれています。そのため有名な「地面に頬杖つきながら蟻の歩き方を幾年もみていてわかったんですが、蟻は左の2番目の足から歩き出すんです」 という言葉を残しています。さて、下の写真にはウズラバタンポポの咲いた後ろに二つの山形が組み合わされた作品が写っています。1990年前後に制作していた「間シリーズ」の一作ですが、写真の作品のどこか気になりませんか? 前のピースの右側に窪んだ部分がありますが、ここには朝顔形の鉢がかみ合っていました。その鉢は他の作品に転用されこの作品の全容はわからなくなりました。間がテーマではあるのですがこの頃の作品には虚実にも関心があり、像が映る水面を取り込んでいました。1991年に日本芸術院賞を受賞なさった、日本建築の恩師故中村昌生先生のお祝いにと松ヶ崎建築会岡山支部から贈られた作品もこのようなものでした。